アイデンティティの虚像を解き明かす――広告主にとってCookieがない世界とは?
Garrett McGrath
9月 3, 2024 | 1 min read
サードパーティCookieの時代が終わりを迎えるなか、業界はオーディエンスを効果的に特定できる新たなアイデンティティモデルに、すぐにでも順応する必要があるでしょう。マーケターがCookieのない世界でどのようにオーディエンスにつながるかという懸念を抱いているのももっともですが、現状と手近にあるソリューションを理解することでCookieからのスムーズな移行を確実なものにできるでしょう。
単一ですべてを網羅できるソリューションの不在により、今後の道すじを提示せずバイヤーの不安をあおるような作り話が飛び交っています。虚構から現実を選り分けて、デジタル広告にはまだ終わりが来ないことを確認しましょう。
事実:
- 関心に基づくアイデンティティソリューションは存在し続ける
- アトリビューションもなくならない
- デジタル広告の成長は今後も続く見込み
- CTVが主要な成長要因となる
事実ではない事項:
- オンライン広告がなくなってしまう
- 「独立web」の終わりが来る
- ウォールドガーデンの巨大企業しか生き残ることができない
現実的な視点で未来をとらえる
現在は流動的ではあるものの、アイデンティティに関してはおそらくファーストパーティかつコミュニティ主体のソリューションという形で、先へと進む道すじが見つかるでしょう。バイヤーは将来も自社のオーディエンスセグメントを構築しているとは限りませんが、ファーストパーティデータを利用してグループ分けをする形で消費者の特定が可能であることは変わらないでしょう。
これは、Deal IDやオークションパッケージが機能するPrebidなどのオープンソースプラットフォームを通じて成立する見込みが高いです。関心に基づく消費者の特定、アドレッサビリティ、アトリビューションはなくならず、進化するだけです。
全体を見てみると、デジタル広告にはまだまだ成長の余地が残されています。スマートデジタルデバイスを利用する世界中の消費者の数は増え続けており、莫大なプログラマティック取引オポチュニティがあるでしょう。1月の時点ではおよそ46億6000万人ものユーザーを意味する世界人口の60%近くがインターネットにアクセスでき、この一年のデジタル広告費は3900億ドルに届く勢いであると、Statistaが発表しています。
デジタル広告費の主要成長要因の一つがCTVになるでしょう。eMarketerによるとアドレッサブルTVおよびOTTは今年、75%の成長を見込んでいます。CTVやOTTプラットフォームの広がりにより、マーケッターは消費者がちゃんと観ているデバイスや画面に対するオムニチャンネルキャンペーンの作成を見据えています。
独立系アドテクがイノベーションと投資利益率向上を推進
独立系アドテク企業は、アイデンティティソリューションの開拓に向けたコラボレーションを受け入れる必要がある一方で、Google、Facebook、Amazonのウォールドガーデンがあたかも年貢を搾取する大名のようになるわけではありません。ウォールドガーデンの巨大企業による寡占では競合が排除され、パブリッシャーの収入低下、マーケッターの投資利益率低下 、ユーザーエクスペリエンス低下を招きます。よって、これらのテクノロジー寡占企業自身も、自社の損失につながってしまう寡占を望んではいないのです。この事態を回避するため、独立系アドテク界隈とPrebidの両方から、バイヤーとセラーにさらなる透明性を提供しつつ当業界における巨大企業のブラックボックスデータに対抗できるアイデンティティソリューションを一致団結して構築するための主要なイニシアチブが進められています。
アイデンティティに関する議論が進む中で、バイヤーにも発言権があるべきではないでしょうか。PrebidやW3Cの協議などの場への参加から開始していくべきでしょう。このような業界グループは、サードパーティCookieの廃止に向けた準備として、移行セグメントの構築からファーストパーティ識別子、模範的消費行動を取る匿名グループに至るまで、前向きな対処法を探っています。同時に、ブランドにとってより有用な手法に関する議論の形成にも役立つでしょう。
そのうえ、オープンで透明性のあるIDソリューションに専心しているベンダーやセラーとのイニシアチブへの投資により、バイヤーが公正な市場における主体性と上質なオーディエンスへのアクセスを確実に持てるようになるでしょう。
結論としては、新たなアイデンティティモデルが構築され、プログラマティック取引の状況が変遷している一方、将来的にもバイヤーはオーディエンスの特定、プログラマティックキャンペーンの評価とそこからの利益を享受することは引き続き可能です。透明性、コラボレーション、公平性が今より大幅に高い環境でこれができるようになるのが理想の姿です。
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